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先名主
茲に又遠州水呑村の
先名主惣内夫婦は九郎兵衞が計ひに任せて江戸表へ出府なし
靈岸島邊に國者の居るを便りて參り此者の世話にて八町
堀長澤町の
裏店を
役人は
發打と
睨み何事とは
白々し其方昨夜大井河原下伊呂村の
辨天堂の前にて
先名主惣内夫婦を
切殺したる
段九郎兵衞が
注進に因て
明白なれば則ち
召捕なりと云ければ九助は
彌々驚て此九助人などを
以て爲すと云ことありと云るゝに九助は
愼しみ
恐れながら私し儀は以前五ヶ年
程江戸へ
罷り出奉公仕つり金百八十兩
貯へ國
許へ
戻りし處江戸稼ぎの留守中先妻里儀
先名主惣右衞門悴惣内と
不義仕つり
剩さへ私しの金子を