元園町もとぞのちょう)” の例文
元園町もとぞのちょう一丁目十九番地の角店かどみせで、その地続きが元は徳川幕府の薬園、後には調練場となっていたので、若い侍などが大勢集って来る。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この人或日の夕元園町もとぞのちょうなる小波先生の邸宅に文学研究会あり木曜日の夜湖山こざん葵山きざん南岳なんがく新兵衛しんべえなんぞ呼ぶ門人多く相集まれば君も行きて見ずやとてわれを伴ひ行きぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼は言われたとおりに、元園町もとぞのちょうの西村の家を訪ねたのである。
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
元園町もとぞのちょうに接近した麹町こうじまち三丁目に、杵屋きねや路久ろくという長唄の師匠が住んでいた。その娘のお花さんというのが評判の美人であった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元園町もとぞのちょうでも相当の商売があって、わたしも度々たびたび買ったことがある。ところが、このおでん屋は私の父にうと相互たがいに挨拶する。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
麹町こうじまち元園町もとぞのちょうから徒歩で本郷まで行くのであるから、午前三時頃から家を出てゆく覚悟でなければならない。
三崎町の原 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は麹町こうじまち元園町もとぞのちょう一丁目に約三十年も住んでいる。その間に二、三度転宅したが、それは単に番地の変更にとどまって、とにかくに元園町という土地を離れたことはない。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は麹町こうじまち元園町もとぞのちょう一丁目に約三十年も住んでいる。その間に二、三度転宅したが、それは単に番地の変更にとどまって、とにかくに元園町という土地を離れたことはない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その年の夏になって、わたしの家は麹町区元園町もとぞのちょう一丁目十九番地に移転した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしどの人の報告も火先が東にむかっているから、南の方の元園町もとぞのちょう方面はおそらく安全であろうということに一致していたので、どこの家でも避難の準備に取りかかろうとはしなかった。
火に追われて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
久しぶりで麹町こうじまち元園町もとぞのちょうの旧宅地附近へ行って見た。九月四日、この朔日には震災一週年の握り飯を食わされたので、きょうは他の用達ようたしを兼ねてその焼跡を見て来たいような気になったのである。
九月四日 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこでお前の住んでいる元園町もとぞのちょうの春はどうだという御尋おたずねでしたが、私共の方は昨今かえってあなたたちの方よりも寂しい位で、御正月だからといって別に取立てて申上げるほどのこともないようです。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)