つぐなひ)” の例文
「三千代さんの心機を一転して、きみもとよりも倍以上に愛させる様にして、其上僕を蛇蝎の様ににくませさへすれば幾分かつぐなひにはなる」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まあ! 執念深い! 発車するまでに、青木さんが、お見えになつたら、そのつぐなひとして、皆さんを箱根へ御招待しますわ。御覧なさい、もう切符を
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「中古ニ隠士徳本ナル者アリ、甲斐ノ人也。常ニ峻攻ノ薬ヲ駆使シテ未ダかつテ人ヲ誤ラズ。かうべニ一嚢ヲ掛ケテ諸州ヲ周流シ、病者ニ応ジ薬ヲ売リつぐなひヲ取ルコト毎貼十八銭——」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此時分龍馬が隊中の者を連て丸山の茶屋で大騒ぎをして「船をられた其のつぐなひにや金を取らずに国をとる、国を取て蜜柑を喰ふ」と云ふ歌を謡はせたのです。ホヽ可笑をかしい謡ですねえ……。
つぐなひや八木巻へんの
春と修羅 第二集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
たゞ畫が如何にもさびしい。出來得るならば、子規の此拙な所をもう少し雄大に發揮させて、さびしさのつぐなひとしたかつた。
子規の画 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
向後ちゝいかりに触れて、万一金銭きんせん上の関係が絶えるとすれば、かれいやでも金剛石ダイヤモンドを放り出して、馬鈴薯ポテトーかぢり付かなければならない。さうして其つぐなひには自然の愛が残る丈である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)