僻説へきせつ)” の例文
緒論で断わってあるとおり、以上の所説は、特殊な歴史と環境とをもった一私人の一私見に過ぎないのであって、おそらく普遍性の少ない僻説へきせつであろうと思われる。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
蕪村は徂徠等修辞派の主張する、文は漢以上、詩は唐以上と言へるが如き僻説へきせつには同意する者にあらざるべけれど、唐以上の詩を以て粋の粋と為したることうたがいあらじ。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今、神秘論者も、ひたすら神秘の一方に偏して知力を排せんとするは、また一種の僻説へきせつたるのみ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
政事の論議に従事し、一代の時流を矯正して、民心の帰向を明らかにする思想家、素より偏見僻説へきせつを頑守し、衆を以て天下を脅かすてき所謂いはゆる政事家なるものに比較すべきにあらず。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
明道めいどうの言をののしって、あに道学の君子のわざならんやとい、明道の執見しっけん僻説へきせつ委巷いこうの曲士のごとし、誠にわらう可き也、と云い、明道何ぞすなわち自らくるしむことかくの如くなるや、と云い、伊川いせんげんを評しては
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蕪村は徂徠ら修辞派の主張する、文は漢以上、詩は唐以上と言えるがごとき僻説へきせつには同意するものにあらざるべけれど、唐以上の詩をもって粋の粋となしたること疑いあらじ。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)