人払ひとばらい)” の例文
旧字:人拂
抽斎はたちま剥啄はくたくの声を聞いた。仲間ちゅうげん誰何すいかすると、某貴人の使つかいだといった。抽斎は引見した。来たのは三人のさぶらいである。内密にむねを伝えたいから、人払ひとばらいをしてもらいたいという。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
応接所の戸をぴんと閉めて、人払ひとばらいの上立籠たてこもれるは深川綾子と怪しき婦人おんな
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところで、今度、隅田川両岸りょうがん人払ひとばらい、いや人よせをして、くだんの陣羽織、菊綴、葵紋服あおいもんぷく扮装いでたちで、拝見ものの博士を伴ひ、弓矢を日置流へぎりゅうばさんで静々しずしず練出ねりだした。飛びも、立ちもすれば射取いとられう。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)