ちッ)” の例文
身動みうごきたくも、不思議なるかな、ちッとも出来んわい。其儘で暫くつ。竈馬こおろぎ、蜂の唸声うなりごえの外には何も聞えん。
其癖そのくせ私は祖母を小馬鹿にしていた。何となく奥底が見透みすかされるから、祖母が何と言ったって、ちッとも可怕こわくない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
から、ちッとも不思議でも何でもないが、雪江さんという相手を失ったのちも、私の恋は依然として胸に残っていた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ついでに頭の機能はたらきめて欲しいが、こればかりは如何どうする事も出来ず、千々ちぢに思乱れ種々さまざま思佗おもいわびて頭にいささかの隙も無いけれど、よしこれとてもちッとのの辛抱。
私がちッとも邪魔な事はないといって止めたけれど、最う斯うなってはとまらない、雪江さんは出て行って了う。松も出てく。私一人になって了った。詰らない……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「畜生……馬鹿……口なんぞ聞いてくれなくッたッてちッとも困りゃしないぞ……馬鹿……」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)