五足いつあし)” の例文
『この、空を持ち上げているという小仕事さえなければ、わしが海を五足いつあし六足むあしで渡って行って、それをお前に取って来てやるんだがなあ。』
髪の根はまげながら、こうがいながら、がッくりと肩に崩れて、早や五足いつあしばかり、釣られ工合に、手水鉢ちょうずばちを、裏の垣根へ誘われく。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と思う存分の気焔を上げて、悠然と五足いつあし六足むあし引き揚げて来た——その刹那である。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとしく前へ傾きながら、腰に手を据えて、てくてくと片足ずつ、右を左へ、左を右へ、一ツずつんで五足いつあし六足むあし
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と身を起こして追おうとすると、やっこ駈出かけだした五足いつあしばかりを、一飛びに跳ね返って、ひょいとしゃがみ、立った女房の前垂まえだれのあたりへ、円いあご出額おでこで仰いで
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二足ふたあし三足みあし五足いつあし十足とあしになって段々深く入るほど——此処ここまで来たのに見ないで帰るも残惜のこりおしい気もする上に、何んだか、もとへ帰るより、前へ出る方がみちあかるいかと思われて、急足いそぎあしになると
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)