不寝ねず)” の例文
旧字:不寢
一刻いっときばかりたつと、どこの部屋もあらかた寝静まったらしく、風呂の湯を落す音と、不寝ねずの番のあくびよりほかは聞こえなくなる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他に恩返おんげえしの仕様がねえから、旦那様を大切でえじに思って、不寝ねずに奉公する心得だが、貴方あんたは今の若さで遊んでいずに、何処かへ奉公でもしたら宜かろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それが何であるかは無論わからなかったが——その解決出来ないものが、彼をこうして不寝ねずの番たらしめている。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
寛文二年印本『江戸名所記』に根津ねず権現ごんげん社は大黒神を祭るなり、根津とは鼠のいわれにて、鼠は大黒神の使者なれば絵馬などにも多く鼠をきたりとあって、不寝ねず権現と書せり
不寝ねずとりで引取ってしまいましたが、今ではどうなっておりますか。
乱松らんしょうの間から高くそびえているのは汐見櫓しおみやぐら、番所のがチラチラと水に赤い影をらせ、不寝ねずの番が見張っている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「自分、考えますのに、われらの力で防ぐよりほかに致しかたもございますまい、作事場のあいだに見張り小屋を設けて、三四人交替に不寝ねずの番をつかまつる、手にあまれば——」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
頭取下役とうどりしたやくという事に成りましたが、更にへつらいを致しませんが、堅い気象ゆえ、毎夜人知れず刀を差し、棒を提げてっと殿様のお居間の周囲まわりを三度ずつ不寝ねずに廻るという忠実なる事は
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まどろみかけるひまもなく、宮のそばに近くいる不寝ねずノ番の一将が来て、またぞろ、彼の神経をがせた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「火の手が見えます!」と不寝ねずの番に起され、はじめて烏巣の方面の赤い空を見た。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不寝ねずの番をしていた徐晃じょこう張遼ちょうりょうの二将が、すぐ本陣から様子を見に駆けだしてみると、呉の船団が、突忽とっこつと、夜靄を破って現れ、今し水寨へ迫ってきた——とのことに、張遼、徐晃は驚いて
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不寝ねずの番の武士であろう。ジ——と隙をうかがって
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)