上達部かんだちべ)” の例文
男の宰相頼定も、これがたたって、三条天皇の治世中は、殿上を遠ざけられ、半生、地下じげ上達部かんだちべというばつの悪い地位にくすぶっていたようである。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、星かげの青い暗がりによどまったのは、一輛の女車と、それをつつむ、ゆゆしい上達部かんだちべのひと群れだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらためて、あたりの上達部かんだちべ(上卿)たちは、からだのしん底から、異様な感動につかれたような声を発した。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六位ノ蔵人くろうどや殿上のはしたちで、それぞれが物蔭での目撃を、中殿ちゅうでん上達部かんだちべへ、むらがり告げていたのであった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
“……上達部かんだちべ殿上人てんじやうびとの、とのゐ所、心をつくしてまうけたり。内侍ども、屋形やかたをしつらひてぞ、おのおの過ごしける。月の頃ならましかば、いかばかりおもしろからまし”
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
施薬院せやくいんをひらいて、薬師くすしだの上達部かんだちべだのが、薬をほどこしたり、また諸寺院で悪病神を追い退ける祈祷きとうなどをして、民戸の各戸口へ、赤い護符ごふなどをりつけてしまったけれど
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かしず上達部かんだちべがあり、お末の小女房だの六位ノ蔵人くろうどたちもいることなので、仮の宮苑とはいいながら、その優雅みやびも麗わしさも、あわれ嵐に打たれたものでしかなく、あるまじき
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上達部かんだちべなどが車副くるまぞいして出門された、という一事だけを、くり返すばかりだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かかる折こそ」とばかり、舎人とねりたちは、宵の早くから酒を持ち込んでいるし、上達部かんだちべたちは、宴楽にけっているし、衛府えふの小者などは、御門が閉まると、かわがわる町へ出ては、遊んで帰った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう御対顔の間は、奏楽も止み、関白ノ内経、諸大臣らは、ゆかのすえにひれ伏し、西と東の中門廊にも、多勢の上達部かんだちべ(上級の公卿)が、御簾みす揚げわたした辺りの一点を、粛と、見やり奉っていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何じゃろう」——しばらくすると、その騒ぎは、波紋のようにひろがって、衛府や大宿直の室に止まらず、上達部かんだちべ舎人とねりたちも、総出になって、仙洞御所のうちの大きな事件となってあらわれた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)