三太夫さんだゆう)” の例文
しかしことさらに主人が立会たちあふほどの事ではない。そのやしき三太夫さんだゆうが、やがてくわを提げたじいやを従へて出て、一同えんじゅの根を立囲たちかこんだ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すなわち今彼に向って「やあやあなんじは人間のしょうか河童のたぐいか」とどなっているのは、鬼河原家の三太夫さんだゆう氏の声にちがいない。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妻の幸子はそのとき三十二歳だった、かの女も彦根藩の医師飯島三太夫さんだゆうのむすめで、幼少のとき池田家の養女となり太宰を婿に迎えたのである。
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ええ。そうらしいんですよ。唖川おしがわ家は大変な騒ぎらしいんですよ。今出て来た三太夫さんだゆうの慌て方といったらなかったわ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父伯爵は首相官邸にいるのだし、秘書も、三太夫さんだゆうも、皆んなその方へ行って、令嬢の慈善行為をさまたげる様な手ごわい召使は一人もいないのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
本店の押しつける無法な仕打を修正して受け入れるだけの識見がない無能な三太夫さんだゆうぶりというものは、どこの国の共産党にくらべてもこれ以下のものは見当らない。
戦後合格者 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
先年御隠居(尾張慶勝おわりよしかつ)が征討総督として出馬したおりに、長州方でも御隠居のさばきに服し、京都包囲の巨魁きょかいたる益田ますだ国司こくし、福原三太夫さんだゆうの首級を差し出し、参謀宍戸左馬助ししどさまのすけ以下をはぎ城に
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さて、三太夫さんだゆうあらためて礼して、送りつつ、落葉おちばにつゝまれた、門際もんぎわ古井戸ふるいどのぞかせた。覗くと、……
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)