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一陣
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いちじん
一人は
左鬢に、
微かな
傷に
白鉢卷、
私は
雀躍しながら、
倶に
眺むる
黎明の
印度洋、
波上を
亘る
清しい
風は、
一陣又一陣と
吹來つて、
今しも、
海蛇丸を
粉韲したる
電光艇は
支えて、堅く
食入って、
微かにも動かぬので、はッと思うと、谷々、峰々、
一陣轟! と渡る風の音に
吃驚して、
数千仞の谷底へ、
真倒に落ちたと思って、小屋の中から転がり出した。
一陣の風はさっと
起って
籠洋燈の火を
瞬きさせた。夜の涼しさは座敷に満ちた。