一昔ひとむかし)” の例文
当時はあからさまに言ひがたき事なきにあらざりしかど十年一昔ひとむかしの今となりては、いかに慎みなきわが筆とて最早もはわざわいを人に及さざるべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
私が以前美女ヶ原で、薬草を採ったのは、もう二十年、十年が一昔ひとむかし、ざっと二昔ふたむかしも前になるです、九歳ここのつの年の夏。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「十六年も一昔ひとむかし
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
う、かど酒屋さかやへだてられて、此處こゝからはえないが、やまのぼ坂下さかしたに、がけしぼ清水しみづがあつて、手桶てをけけて、眞桑まくは西瓜すゐくわなどをひや水茶屋みづぢややが二けんばかりあつた……それも十ねん一昔ひとむかしる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)