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せきもん
彼は
絹帽にフロックコートで勇ましく官邸の
石門を出て行く細君の父の姿を鮮やかに思い浮べた。
又半
町程行つて二十畳敷
許りの円い広場へ出たと思ふと、正面に大きな
厳しい
石門が立つて居る。
石門の中も
亦広場になつて居て、更に第二の
石門が
闇の口を開くのに出逢ふ。
或は、
仏の
御龕の
如く、
或は
人の
髑髏に
似て、
或は
禅定の
穴にも
似つゝ、
或は
山寨の
石門に
似た、
其の
岩の
根には、
一ツづゝ
皆水を
湛へて、
中には
蒼く
凝つて
淵かと
思はるゝのもあつた。