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さつきやま
駕籠なんぞに
窮屈な
思ひをして
乘つてゐるよりは、
輕い
塵埃の
立つ
野路をば、
薄墨に
霞んだ
五月山の
麓を
目當てに
歩いてゐた
方が、どんなに
樂しみか
知れなかつた。
五月山の
木が一
本々々數へられるやうになると、
池田の
町は
直ぐ
長い
坂の
下に
見おろされた。
此處からはもう
多田院へ一
里、
開帳の
賑ひは、この
小都會をもざわつかしてゐた。
今まで
前面に
見てゐた
五月山の
裏を、これからは
後方に
振りかへるやうになつた。