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かはむかう
「おとつゝあ、
喫べてえ
物でもねえけえ、
俺ら
明日川向さ
行つて
來べと
思ふんだ」
勘次はまだ
幾らか
心に
蟠りがあるといふよりも
長吉はどん/\流れて
行く
河水をば
何がなしに悲しいものだと思つた。
川向の
堤の上には一ツ二ツ
灯がつき出した。
川向は日の光の強い
為に
立続く
人家の
瓦屋根をはじめ一帯の
眺望がいかにも
汚らしく見え、風に追ひやられた雲の列が
盛に
煤煙を
吐く
製造場の
烟筒よりも
遥に低く、動かずに層をなして
浮んでゐる。