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かどやしき
「つかんことを聞くがね、お前さんは
何じゃないかい、この、
其処の
角屋敷の
内の人じゃないかい。」
大阪の東町奉行所は城の
京橋口の外、京橋
通と
谷町との
角屋敷で、
天満橋の
南詰東側にあつた。東は城、西は谷町の通である。南の
島町通には街を隔てて
籾蔵がある。
それだのに、
私の
家までは
聞えない。——でんこでんこの
遊びではないが、
一町ほど
遠い
遠うい——
角邸から
響かないのは
無論である。
一町ばかり、
麹町の
電車通りの
方へ
寄つた
立派な
角邸を
横町へ
曲ると、
其處の
大溝では、くわツ、くわツ、ころ/\ころ/\と
唄つて
居る。
外廓のその煉瓦と、
角邸の亜鉛塀とが向合って、道の幅がぎしりと狭い。