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破
>
や
ふりがな文庫
“
破
(
や
)” の例文
月も日も刻も同じ七月の十五日の夜、庭窪の蘇州庵という
破
(
や
)
れ唐館で同じように朱房の匕首で背中を後から突かれて死んでおりました
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と、徳利をつかんだまま、よろよろと、立ちあがると、ガタピシと
破
(
や
)
れ
襖
(
ぶすま
)
をあけ立てして、
庫裡
(
くり
)
の戸棚の中の、
揚
(
あ
)
げ
蓋
(
ぶた
)
を
刎
(
は
)
ね上げる。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ところが、その時早しその時おそし、聴衆のなかに
忽
(
たちま
)
ち
破
(
や
)
れ鐘のやうな
哄笑
(
こうしょう
)
が起つて、ぬつと前へせせりだした一名の壮漢がある。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
破
(
や
)
れ
垣
(
がき
)
の一草庵と思いきや、粗末な荒土ながら土塀がひろく
繞
(
めぐ
)
らしてある。近づけば、燈火も点々、三つ四つは奥のほうに見える。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
書に
倦
(
う
)
みたる春の日、文作りなづみし秋の夜半、ながめながめてつくづくと愛想尽きたる今、忽ち
破
(
や
)
れ
団扇
(
うちわ
)
と共に汝を捨てんの心
切
(
せつ
)
なり。
土達磨を毀つ辞
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
わたしは無言で歩いた。男も無言でさきに立って行った。うしろの山の杉木立では、秋の
蝉
(
せみ
)
が
破
(
や
)
れた笛を吹くように
咽
(
むせ
)
んでいた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こちらが頭を下げると同時に彼は満足な足をあげて、
破
(
や
)
れ
足袋
(
たび
)
の上に加えた。この人は足袋の穴に拘泥していたのである。……
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あるいは「
破
(
や
)
れウィオリノ」という題名として
絃
(
いと
)
の切れたウィオリンの画の上に題名を書くというような鼻持ならない
黴臭
(
かびくさ
)
い案だったから
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
真珠のような
銀鼠色
(
ぎんねずみいろ
)
した小鳥の群が、流るる星の雨の如く、
破
(
や
)
れ蓮にかくれた水の中から、非常な速度で斜めに飛び立った。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
純な青年の心ひとすじで
対
(
むか
)
っていることも基経は知っているだけ、それがどういう烈しい
破
(
や
)
れ目を見せるかが分っていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
さっと
一汐
(
ひとしお
)
、
田越川
(
たごえがわ
)
へ上げて来ると、じゅうと水が染みて、その
破
(
や
)
れ
目
(
め
)
にぶつぶつ
泡立
(
あわだ
)
って、やがて、満々と水を湛える。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
趨
(
はし
)
りて場を出づれば、月光
遍
(
あまね
)
く照して一塵動かず、古の劇場の石壁石柱は
巋然
(
きぜん
)
として、今の
破
(
や
)
れ小屋のあなたに存じ、廣大なる黒影を地上に印せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
と
破
(
や
)
れた
人間離
(
にんげんばなれ
)
のした
嗄声
(
しゃがれごえ
)
が
咽喉
(
のど
)
を
衝
(
つ
)
いて
迸出
(
ほとばしりで
)
たが、応ずる者なし。大きな声が夜の空を
劈
(
つんざ
)
いて四方へ響渡ったのみで、
四下
(
あたり
)
はまた
闃
(
ひッそ
)
となって了った。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
何分かの後、
懐
(
ふところ
)
に猫を入れたお富は、もう傘を片手にしながら、
破
(
や
)
れ
筵
(
むしろ
)
を敷いた新公と、気軽に何か話してゐた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ついさっきまで夜具の裾のほうにあったのが、今はずっと短かくなって、
破
(
や
)
れ畳の中ほどまでを染めているにすぎない、するともう三時ころなのだなと思った。
泥棒と若殿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
されば流れざるに水の
溜
(
たま
)
る
如
(
ごと
)
く、
逢
(
あ
)
わざるに
思
(
おもい
)
は積りて
愈
(
いよいよ
)
なつかしく、我は薄暗き部屋の
中
(
うち
)
、
煤
(
すす
)
びたれども天井の下、赤くはなりてもまだ
破
(
や
)
れぬ畳の上に
坐
(
ざ
)
し
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
丁度其の日の
申刻
(
なゝつ
)
下
(
さが
)
り、日はもう西へ傾いた頃、此の茶見世へ来て休んでいる
武士
(
さむらい
)
は、廻し
合羽
(
がっぱ
)
を着て、柄袋の掛った大小を差し、半股引の少し
破
(
や
)
れたのを穿いて
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何故かと云へば、
卒塔婆
(
そとば
)
の
破
(
や
)
れ
垣
(
がき
)
の横を通つてその入口に達すると「あづまアバート」と書いた木札がかかつてゐて、ちやんと、アパートではないとことわつてゐる。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
老たる母に朝夕のはかなさを見せなければならないゆえ、一身を
贄
(
にえ
)
にして一時の運をこそ願え、私が一生は
破
(
や
)
ぶれて、道ばたの
乞食
(
こじき
)
になるのこそ終生の願いなのです。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
黄金丸はいと
不憫
(
ふびん
)
に思ひ、
件
(
くだん
)
の雌鼠を
小脇
(
こわき
)
に
蔽
(
かば
)
ひ、そも何者に追はれしにやと、
彼方
(
かなた
)
を
佶
(
きっ
)
ト見やれば、
破
(
や
)
れたる板戸の陰に身を忍ばせて、
此方
(
こなた
)
を
窺
(
うかが
)
ふ一匹の黒猫あり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
女
(
をんな
)
は
破
(
や
)
れ
窓
(
まど
)
の
障子
(
しやうじ
)
を
開
(
ひら
)
きて
外面
(
そとも
)
を
見
(
み
)
わたせば、
向
(
むか
)
ひの
軒
(
のき
)
ばに
月
(
つき
)
のぼりて、
此處
(
こゝ
)
にさし
入
(
い
)
る
影
(
かげ
)
はいと
白
(
しろ
)
く、
霜
(
しも
)
や
添
(
そ
)
ひき
來
(
き
)
し
身内
(
みうち
)
もふるへて、
寒氣
(
かんき
)
は
肌
(
はだ
)
に
針
(
はり
)
さすやうなるを
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お君はどこまでも、米友の言うことを気にしないで、いつもの通り軽くあしらって、着物を畳んでいるが、米友はやっぱり浮かない
面
(
かお
)
をしていると、
破
(
や
)
れ
障子
(
しょうじ
)
の裏で、ワン!
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とこの時太いステッキをついた
破
(
や
)
れ服日和下駄の一高生が後ろから弥次った。この男は何ういう料簡か、先刻から受験者の並んでいるところを頻りに
彼方此方
(
あっちこっち
)
と歩いていた。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
裕佐は思はずかう嘆息を洩らして
破
(
や
)
れ芭蕉の乱れてゐる三坪ばかりの庭の方を向いた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
濁つた池の
面
(
おもて
)
は錆び果てて、何の色香も無い庭だが、隅この
小
(
ちひ
)
さな石橋の蔭には、
破
(
や
)
れ残つた蓮の浮葉が二つか三つ、下のあはれなすがれ葉には、時おくれの精霊蜻蛉が休んでゐる。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
枯れ萩に
蔽
(
おお
)
われた崖が、
破
(
や
)
れ腐ちた縁のすぐの向こうに、壁かのように立っていたが、その崖を背にし縁の上に、先刻の三匹の親子狐が、鼻面を並べ
蹲居
(
そんきょ
)
して、この屋内を覗いていた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここを以ちて大殿
破
(
や
)
れ
壞
(
こぼ
)
れて、悉に雨漏れども、かつて
修理
(
をさ
)
めたまはず、
楲
(
ひ
)
一〇
をもちてその漏る雨を受けて、漏らざる處に遷り
避
(
さ
)
りましき。後に
國中
(
くぬち
)
を見たまへば、國に烟滿ちたり。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
此時分龍馬が隊中の者を連て丸山の茶屋で大騒ぎをして「船を
破
(
や
)
られた其の
償
(
つぐなひ
)
にや金を取らずに国をとる、国を取て蜜柑を喰ふ」と云ふ歌を謡はせたのです。ホヽ
可笑
(
をか
)
しい謡ですねえ……。
千里の駒後日譚拾遺
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
あるじ
一〇
山
枴
(
あふご
)
をとりて走り出で、
外
(
と
)
の方を見るに、
年紀
(
としのころ
)
一一
五旬
(
いそぢ
)
にちかき老僧の、
頭
(
かしら
)
に
紺染
(
あをぞめ
)
の
一二
巾を
帔
(
かづ
)
き、身に墨衣の
破
(
や
)
れたるを
穿
(
き
)
て、
一三
裹
(
つつ
)
みたる物を背におひたるが、
杖
(
つゑ
)
をもてさしまねき
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
たもち得ぬ才はたとへばうまざけの
破
(
や
)
れし
甕
(
かめ
)
にも似たるこの人
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
芭蕉葉もやうやく
破
(
や
)
れて秋ふけぬと思ふばかりに物ひそかなり
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
破
(
や
)
れ
鍋
(
なべ
)
が一つ、箱の底にゴロッと転がっているんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あゝ古ぼけた
破
(
や
)
れ帽子のやうな年が死んだ。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
なべては
破
(
や
)
れし
榮
(
はえ
)
の屑、(顧みなせそ)
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
訪なふは
啄木
(
けら
)
鳥かや雪の
破
(
や
)
れ
扉
(
とぼそ
)
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
破
(
や
)
れ
傘
(
がさ
)
を笑ひさしをり春の雨
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
破
(
や
)
れし
築地
(
ついぢ
)
にみだれたる
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
破
(
や
)
れしみ
經
(
きやう
)
や讀むべき。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
破
(
や
)
れし戸に倚る夏菊の
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
破
(
や
)
れし
衣
(
ころも
)
の
寒
(
さむ
)
けきに
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
障礙
(
しやうげ
)
は
破
(
や
)
れぬ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
船は
破
(
や
)
れ船
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
しょせん逃げおおせぬとあきらめてか、途中、小さい
破
(
や
)
れ
堂
(
どう
)
を見かけるやいな隠れこんで、内から
御堂格子
(
みどうごうし
)
を閉じていたのだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
揺れて触れ合う
破
(
や
)
れ葉の間からは、ほとんど聞き取れぬほど低い弱い、しかし云われぬ情趣を含んだ
響
(
ひびき
)
が伝えられる。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
墨染の麻の
法衣
(
ころも
)
の
破
(
や
)
れ破れな
形
(
なり
)
で、
鬱金
(
うこん
)
ももう鼠に汚れた布に——すぐ、分ったが、——三味線を一
挺
(
ちょう
)
、
盲目
(
めくら
)
の
琵琶
(
びわ
)
背負
(
じょい
)
に
背負
(
しょ
)
っている、
漂泊
(
さすら
)
う
門附
(
かどづけ
)
の
類
(
たぐい
)
であろう。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
障子の紙も貼ってから、一冬はもう越えたのであろう。切り貼りの点々とした白い上には、秋の日に照らされた
破
(
や
)
れ
芭蕉
(
ばしょう
)
の大きな影が、
婆娑
(
ばさ
)
として斜めに映っている。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女は
破
(
や
)
れ
窓
(
まど
)
の障子を
開
(
ひ
)
らきて
外面
(
そとも
)
を見わたせば、向ひの
軒
(
のき
)
ばに月のぼりて、
此処
(
こゝ
)
にさし入る影はいと白く、霜や添ひ
来
(
き
)
し身内もふるへて、寒気は
肌
(
はだ
)
に針さすやうなるを
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
庄左衞門は
破
(
や
)
れた
戸棚
(
とだな
)
からたしなみの刀を出してさア来いと云う。娘は
慄
(
ふる
)
えながら両手をついて
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
区画整理のおいおい
進捗
(
しんちょく
)
すると共に、その姿を東京市内から消してしまって、わずかに場末の
破
(
や
)
れた垣根のあたりに、二、三本ぐらいずつ栽え残されているに過ぎなくなった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
はづかなるあるかなきかの金を得て、かきよせて、市のちまたに米買ふと
破
(
や
)
れし嚢を手にさげて、これに米、すこし賜べよと乞ひのめば入れて賜びけり、さらさらと入れて賜びけり。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
破
常用漢字
小5
部首:⽯
10画
“破”を含む語句
破壊
打破
破局
破片
破損
破綻
驚破
素破
破落戸
破壞
切破
破目
看破
破滅
破障子
破衣
破風
破鐘
破屋
破裂
...