おか)” の例文
わたしは、おぼえのあろうはずがないけれど、なにかつみおかしたので、それでかみさまは、このへこんなにみにくまれさせられたのです。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無知な者は、罪をおかす時まではそんなに大それたことと思わないでいて、犯した時に至って初めて、その罪の大きかったのに仰天ぎょうてんする。
位地の高いものはもっともこの罪をおかしやすい。彼らは彼らの社会的地位からして、他に働きかける便宜べんぎの多い場所に立っている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし此辺このへんにてこの禁をおかせば、必ず波風大きに起りてあやうきことあり。三味線はねこの皮にて張りたるものなれば、鼠のむ故なりとぞ云々
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
下等船客かとうせんきやくいち支那人シナじんはまだ伊太利イタリー領海りやうかいはなれぬ、ころよりくるしきやまひおかされてつひにカンデイアじまとセリゴじまとのあひだ死亡しぼうしたため
この諸能力がおのおのその固有の働をたくましゅうして、たがいに領分をおかさず、また他に犯されずして、よく平均を保つもの、これを完全の人心という。
文明教育論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だが、その愛には何かおかしがたいものがあって、うっかり飛びついて行けないような気がする。牛肉一件以来彼はそうした気持になっているのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
聞いておると、賊の五人組のうち、女ふたりは、越前守様がお若い頃におかした過ちの——悪縁をもつ母子おやこではないか
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしてべつある誤謬ごびゆうそんするあるにもあらずしてこの殺人さつじんつみおかす、世に普通なるにあらずして、しかも普通なる理由によつてなり、これをうつきはめてかた
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ゼルビノはつみおかしたが、またかれの過失かしつのためにわたしたちはこんなひどい目に会わされることになったのであるが、かれをふりてることはできなかった。
みね此出來事このできごとなんとしてみゝるべき、おかしたるつみおそろしさに、れか、ひとか、先刻さつき仕業しわざはと今更いまさら夢路ゆめぢ辿たどりて、おもへば此事このことあらはれずしてむべきや
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのもしやが、本当だと云うことが分ると、妾は、大変なことが起ったと思ったのです。妾のおかした失策が、取り返しのつかないものだと云うことを知ったのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かれは日記に「荻生君はわがじょうの友なり、利害、道義もってこの間をおかし破るべからず」と書いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その上、この信條で、私は、それははつきりと罪人と、そのおかした罪とを區別することが出來るの。だから私は罪を憎んでゐても、罪を犯した人は眞心からゆるせるのよ。
わがおかせる罪のため、ついに私の上に天罰てんばつが下った。今や私はこの檻の中で餓死がしするばかりだ。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかるに我国かつて火浣布くわくわんふつくるのいしさんす、そのる所は、○金城きんじやう山○巻機まきはた山○苗場なへば山○八海山はつかいさんその外にもあり。その石軟弱やはらかにしてつめをもつてもおかすべきほどのやはらなる石なり。
言いすてて、ふたりは、不敵にもまだ日が高いというのに危険をおかし乍ら市中へ出ていった。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
塩焼王も殺され、押勝の妻子も斬られ、その姫は絶世の美貌をうたわれた少女であったが、千人の兵士におかされ、千一人目の兵士の土足の陰に、むくろとなって、冷えていた。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それを思い合わせると、初代に対する求婚に失敗した彼が、私から彼女を奪う為に、綿密に計画された、発見の恐れのない殺人罪をあえおかさなかったと、断言出来るであろうか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この解釈を承認する上は、さらにある驚くべき大罪をおかさねばならぬということを。
友人をあざむく……道徳上の大罪を承知でおかすように余儀なくされた。友人の好意で一面の苦しみはやや軽くなったけれど精神上に受けた深い疵傷きずは長く自分を苦しめることになった。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
佛蘭西人フランスじんだアルゼリヤをおかさない數年前すねんぜんに此ブリダアのまちにラクダルといふひとんでたが、これは又たたいした豪物えらぶつで、ブリダアの人々から『怠惰屋なまけや』といふ綽名あだなつてをとこ
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
以て大前提とし次にビジテリアンがこれにそむくことを述べて小前提とし最後にビジテリアンが故に神にそむくことを断定し菜食なる小善の故に神に背くの大罪をおかすことを暗示いたされました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分じぶん現世げんせおかした罪悪つみがだんだんこはくなってどうにも仕方しかたなくなりました。
どこかおかがたいところのあるかおかたちは、かたき武家ぶけが、しのんでの飴売あめうりだとさえうわさされて、いやがうえにも人気にんきたかく、役者やくしゃならば菊之丞きくのじょう茶屋女ちゃやおんななら笠森かさもりおせん、飴屋あめや土平どへい絵師えし春信はるのぶ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なんだか罪悪ざいあくでもおかすやうながしたので。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何となくおかがたき品位があつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人から一毫いちごうおかされまいと、強い点をあくまで固守すると同時に、せめて半毛はんもうでも人をおかしてやろうと、弱いところは無理にもひろげたくなる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
子供こどもにはつみがありません。みんな大人おとなおかしたあくむくいです。どうか、世間せけんにそのことがわかってもらいたいのです。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところがね、その人のいいところに、何ともいえぬつよみがあるのですよ、いわばおかし難いところがあるんです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
君らさえもう少し良心的であってくれたら、板木を打った人も、ああしたあやまちをおかさないですんだのだろうと思うと、それが私はくやしくてならない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すなは作者さくしや精神せいしんめて脚色きやくしよくしたるもの、しかしてその殺人罪さつじんざいおかすにいたりたるも、じつれ、この錯亂さくらん、この調子てふしはづれ、この撞着どうちやくよりおこりしにあらずんばあらず。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかるに我国かつて火浣布くわくわんふつくるのいしさんす、そのる所は、○金城きんじやう山○巻機まきはた山○苗場なへば山○八海山はつかいさんその外にもあり。その石軟弱やはらかにしてつめをもつてもおかすべきほどのやはらなる石なり。
わたしが仲間なかまの間に規律きりつたもとうとすれば、つみおかしたものはばっせられなければならない。それをしなかったら、つぎの村へ行って、今度はドルスが同じ事をするであろう。
まして海上の不知不案内をおかして、危険と闘うような必要などは有り得ないはずであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「なぜ手を洗ったんだ。一体何をしていたんだ。法医学教室の神聖をおかすと承知しないよ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
血に交わりて赤くならずこの通り幼少の時から酒が数寄すきで酒のめにはらん限りの悪い事をして随分不養生もおかしましたが、又一方から見ると私の性質として品行は正しい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と、すぐ全軍を青州から引き揚げにかからせたが、その途すがらも、秋毫しゅうごうおかすことない徳風を慕って、郷村きょうそんの老幼男女は、みな道にならび、香をき、花を投げて、歓呼した。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかせる罪はいとも深し
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
したがって山水によって画を愛するのへいはあったろうが、名前によって画を論ずるのそしりもおかさずにすんだ。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さあ、この席のことはこの席限り、昔おかした罪でも、神妙に懺悔ざんげをすれば仏様が許して下さる。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんなことを言っている私自身が、今朝は、君らに対して重大な過失をおかしてしまったようだ。私は、さっき君らを非難して、平気で自分の良心を眠らせている人間だと言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
高氏はそんな彼女を、つい、自分たちの社会へ引き込むとがおかしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余が前號ぜんごう批評ひゝようにもひしごとく罪と罰とは最暗黒さいあんこく露國ロコクうつしたるものにてあるからに馬琴バキン想像的侠勇談そうぞうてきけふゆうだんにあるごとある復讎ふくしゆうあるは忠孝等ちゆうこうとうゆえ殺人罪さつじんざいおかさしめたるものにあらざること分明ぶんめいなり。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
帝室にしてくその地位を守り幾艱難いくかんなんのその間にも至尊しそんおかすべからざるの一義をつらぬき、たとえばの有名なる中山大納言なかやまだいなごん東下とうかしたるとき、将軍家をもくして吾妻あずまの代官と放言したりというがごとき
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おかせる罪あって、お仕置に逢って、ねられた首が六尺高いところに上げられている運命。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日がだんだんかたぶいて陰の方は蒼い山の上皮うわかわと、蒼い空の下層したがわとが、双方で本分を忘れて、好い加減にひとの領分をおかし合ってるんで、眺める自分の眼にも、山と空の区劃くかくが判然しないものだから
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(法の尊厳は、寸毫すんごうおかすべからず。法を歪曲わいきょくして、国政なし)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山の通人は、自分の博識の権限をおかされでもしたように、ムッとして
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「吉宗が、いつ、法をおかしたと申すのじゃ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)