)” の例文
「これは誠に恐れ入ります。御代官様の御相談ならばどんなことでも御相手になりましょう。どうかんなりと仰せつけください。」
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
お千代はにしろ芸者をやめて素人になれるという嬉しさが先に立っている時でもあり、また今まで世帯の苦労をした事がないので
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
文庫ぶんこ御宅おたくのでせうね。いんでせうね」とねんして、にもらない下女げぢよどくがらしてゐるところへ、最前さいぜん仲働なかばたらき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
んといふ立派な考へであらう、どんなにどつさり立木をいた所で、木は有合せ物で、画家ゑかき懐中ふところ一つ痛めずに済む事なのだから。
ほんとうにんにも、私は今あいつの葬式の出る所を見届けて来たんです。念の為に近所で聞いて見ましたがね。やっぱりそうでした。
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
父も食客を置いてゐるから、僕もおいてやれと、置いてゐる内に、んしろ、二十七と、二十一歳の美少年とだから、かなはない。
こんな事件に、にも罪のないあたくしみたいなものが引込まれるなんて、あたし一生の不運だと思っていますわ、なんでもいいんです
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「私は決して怪しい者じゃありません、雨に降られたものですから、空家と思って入ったのです、んとも申しわけがありません」
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お前がやはり、手出てだしをするから、それで喧嘩になるんだ。にもせんで、黙っているものを打ったり突いたりするものはない。」
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
話し手、倉繁大一郎の調子には、にかしら異常なものがありますが、それだけに聴衆に訴える力には、容易ならぬものがありました。
貴方あなたは、んかてえとうちが淋しい淋しいツて有仰おつしやいますけれども、そりや家に病身の人がゐりや、自然しぜん陰氣いんきになりもしますわ。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
嗅煙草も歯車もにもかもなんだ。今朝眼をさますと同時に解ったんじゃ、そうしてわしは外へ出て来て作男のゴーとも話したんじゃ。
にしろよわつたらしい。……舞臺ぶたい歸途かへりとして、いま隧道トンネルすのは、芝居しばゐ奈落ならくくゞるやうなものだ、いや、眞個まつたく奈落ならくだつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
んぼんでも、不意に二人でいんだら、うち喫驚びつくりしますがな。』と、お光は自家うちへ小池を伴なつて歸るのをしぶる樣子であつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぜなら、いまだかつて何者も制御し得なかった反絵の狂暴を、ただ一睨いちげいの視線の下に圧伏さし得た者は、不弥うみの女であったから。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
鐵材てつざい運搬役うんぱんやくでも、蒸滊機關じようききくわん石炭せきたんきでもんでもよいから、海底戰鬪艇かいていせんとうてい竣成しゆんせいするまで、わたくししかるべきやく遠慮えんりよなく使つかつてください。
あたり前ならば大学生になれたうれしさに角帽をかぶって歩いてもいい時であるが、私はんだか世の中が面白くなくって困った。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
其所そこで、その岩窟がんくつなるものが、そもそんであるかを調しらべる必用ひつようしやうじ、坪井理學博士つぼゐりがくはかせだい一の探檢調査たんけんてうさとなつた。それは九ぐわつ十二にちであつた。
其間そのあひだかほあはせることがあつても、くちでは其事そのことんにもはない。そしてうちかへつてから葉書はがきす。チヨイト面白おもしろいものだよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
百両なんてえ金を持ってる気遣きづけえはねえ、彼様な奴が盗賊どろぼうだかんだか知れやアしない、此様こんな大きな石を入れて置きやアがって
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
んでも料理法を研究すればそれぞれ利用法があるから非常の経済になる。食品を不経済に使うのは料理法を知らない人に限るね
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「貴様※みたいな、よそから来たものに馬鹿ばかにされてたまっか。早く銭を払え、銭を。ないのか、この野郎。ないならして物食った。こら」
祭の晩 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あなたはしゃりこうべですもの——そんなことは言ったって言わなくたって、この世にはんにもならないことだとそう思いませんか。」
しゃりこうべ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
んでえわれがまた、牡馬をんま牝馬めんまだけの血統證けつとうしようだんべ、そんなものなんるもんぢやねえ、らねえとおもつて、白河しらかはいちいてらあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まためんにはかれ立派りつぱ教育けういくけ、博學はくがく多識たしきで、んでもつてゐるとまちひとふてゐるくらゐ。で、かれまちきた字引じびきとせられてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしの骨折ほねおりなんかは、なんでもございませんわ。(画家はんの事か、分らぬらしく、娘の顔を見る。娘は悪気わるげに。)
そなたもわかいのに歿なくなって、まことにどくなことであるが、なかはすべて老少不定ろうしょうふじょう寿命じゅみょうばかりはんとも致方いたしかたがない。
けはない、おのずから方便ありなんてヅウ/″\しくやって居たが、とう/\つかまったのが可笑おかしいどころか一時おお心配をした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さてすべき事とはにぞ、そは妾の身体の普通ならずして、牢獄にありし二十二歳の当時まで、女にはあるべき月のものを知らざりし事なり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
りやうさんお約束やくそくのものわすれてはいやよ。アヽ大丈夫だいじやうぶすれやアしなひしかしコーツとんだツけねへ。あれだものをかけにもあのくらゐねがつておいたのに。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おんしゃら、一ちょう浪花節掛けエ! 虎造の森の石松やぜ。虎造はよう読みよる。んしょ、てきは声が良えさかいな」
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そのおさへて居ると云ふのは喜びに伴ふ悲哀でもんでもない、良人をつとと二人で子の傍へ帰つて来る事の出来なかつたのがあからままに悲しいのである。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『あんな物が、よしや、誰の手にわたろうと、にほどの役に立つか。大工の引いた間取で、しかも、その後幾度いくたびも、御邸内の普請は変っている』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その男というのはその時分丁度ちょうど四十一二ぐらいで、中々なかなか元気な人だったし、つ職務柄、幽霊の話などはてんから「んの無稽ばかな」とけなした方だった
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
「これもいまとなつてみれば、んでもない。ふねからうみてようかとおもつたけれど、到頭たうとうまた日本にほんつてかへつた。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「吾は恆に思ほすことあり。ぞといへば、いましの子目弱の王、人となりたらむ時、吾がその父王を殺せしことを知らば、還りてきたなき心一二あらむか」
「おばあさまが喜んで下さることだったら、んでもいたしますわ。あさってあたり、お懐石かいせきでもしようかと、わたし、こっそり計画してますのよ。」
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
んでもでも十数年の後には徒手にて出来る工風くふうなれども、政府にてはまだ農業は鄙事ひじなりとでも思わるるにや
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
主人と衝突して、さっきから無暗むやみにむしゃくしゃして……。そら、んとか云うでしょう。ああ、憂欝、憂欝……。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは、ひと讀書どくしようへばかりではない。んでも、自己じここしゑてかゝらなければ、をとこでもをんなでも、一しやう精神上せいしんじやう奴隷どれいとなつてんでほかいのだ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ハハハ。友川の兄御も、お役を退かれた久世殿もその名前を御存じではあったろうが、にせい相手が霞が関の黒田藩となると事が容易でないからのう」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
付け狙っていた事はわかっておりますが、何分証拠がない事には致し方がございません。ドーブレクが女優の処へ来たと云う証拠もなく、に一ツ手懸りを
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
に毒じゃない」そう云って彼は老翁の方を向いた。南京豆にはじまった私との会話は南京豆で終いになった。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
にお寺なものか、お寺ならお師匠さまがゐて可愛がつて下さるだらうが、山の小僧は木のまたから生れたから、お父さんもお母さんもなしの一人ぽつちよ。」
大寒小寒 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
貴様がにをようと僕が何をようと、それが他人ひとに害を及ぼさぬ限りはお互の自由です。貴様あなたに秘密があるならみずからず秘密にたらいでしょう。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
にがそんなに遊んではいけないのだろう? 遊んでいけないのより、許可おゆるしをうけず外へ出るから、それがいけない、では許可をうければゆるしたか? なんの
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「おら、きのう須田から帰って来たばかりだごんだ。——あすこでもはあ、これからじょにして行くか困ったもんだなあ、考えておら昨夜睡れなかったごんだ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ルーテルの幼きや、胡弓を人の門口かどぐちに弾じて以てみずから給す、弾じ終りて家人の物を与えんとするや、彼れたちまち赤面してのがれ去れり。彼んぞかくの如く小心なる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
久振ひさしぶりで東京へ帰ッて参りまして、安心して休むつもりであッたところが、突然お呼出しになりまして、定めしにか御馳走でもあるじゃろうと思ッて来たところが
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)