)” の例文
按摩あんまつゑちからに、かはべりの水除みづよづゝみると、つゑさき両手りやうてをかけて、ズイとこしばし、みゝそばだてゝかんがえて様子やうす、——とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでも筆と紙がいっしょにならない時は、撮んだ顎を二本の指でして見る。すると縁側えんがわで文鳥がたちまち千代ちよ千代と二声鳴いた。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうせこゝまで来たことだからと、筮竹ぜいちくと天眼鏡を荷厄介にしながら、駿府すんぷまでして見たのだったが、これが少しも商売にならず。
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
繁った枝葉を巧みに縫い棹はあたかも征矢そやのように梢遥かにして行ったが、落ちて来た時にはその先に山鳩を黐でつなぎ止めていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おそろしくおほきないぬころが、おほきなまるをしてあいちやんを見下みおろしてました、あいちやんにさわらうとして前足まへあしを一ぽんおそる/\ばして。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
見て居ると、其おびただしい明光あかりが、さす息引く息であるかの様にびたり縮んだりする。其明りの中から時々いなずまの様なひかりがぴかりとあがる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
老人が笑いながら手を差しべて彼を石から下し、自ら代ってこれに乗ると、では射というものをお目にかけようかな、と言った。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
今夕も、関ヶ原まですという行動には一切干渉しない代り、心利いた若い者の庄公を目附として、ここまでつけてよこしました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鶴見は自分で研究が出来ぬまでも理解は持っていたので、そういう方面の課題に対してはいつでも興味だけはびるままに伸していた。
げにやくまなく御稜威は光被する。鵬翼萬里、北をおほひ、大陸をつつみ、南へ更に南へびる。曠古未曾有の東亞共榮圈、ああ、盟主日本。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
池のなぎさはかすかにわかるが、藤棚から藤のつるが思いのまま蔓延はびこっているし、所々には、亭々ていていたる大樹が二重に空をおおっている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おとうさん、すずらんのが、だんだんびてきましたよ。」と、にわて、あそんでいた少年しょうねんが、おくほうかっていいました。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
と右手を横にばしたかと思うと、だらしのないやつで、あんまり駈けつづけて来たので、そのままそこに気を失ってしまった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かれ赤栗毛あかくりげの、すばらしいイギリス馬を持っていた。すらりと細長い首をして、よくびたあしをして、つかれを知らぬ荒馬あらうまだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
また二階借りから、一けんの所帯へとびて行く、——それはまるで、果てしのない沙漠さばくへでも出発するかのように私をひどく不安がらせた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
私はふと何故なぜだか分らずにそのなめらかそうな柵をいじくろうとして手をさしべたが、それにはちょっとれただけであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
無論小さく、写生風しゃせいふうに、鋳膚いはだで十二分に味を見せて、そして、思いきりばしたくびを、伸ばしきった姿の見ゆるように随分ずいぶん細く
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少しびあがるようにしながら、二人の横の窓の外をのぞきました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おれにも貸せ」と梶さんが手をばす。「待て、待て」と横からのぞいていた沢村さんが怒る。あとは、ワアッと大笑いでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
アーサー・フィードラー はボストン・ポップスの指揮者、アメリカ風の気の利いた颯爽たる人で、近頃ぐんぐんしている。
にわ若草わかくさ一晩ひとばんのうちにびるようなあたたかいはるよいながらにかなしいおもいは、ちょうどそのままのように袖子そでこちいさなむねをなやましくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの化物の身体は、自由にちぢみをするということ、そして透明だということ、——これがあの化物の皮膚の一部なのです
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これにこそ法王もカルディナレもその心をとむるなれ、彼等の思ひはガブリエルロが翼をべし處なるナツァレッテに到らじ 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
池には葦が伸び蒲がき、が抽んでる。遅々として、併し忘れた頃に、俄かにし上るやうに育つのは、蓮の葉であつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
健全なる個人的思想にびて行ったならば、国家なる語を公言することは少なくなっても、実際においてその力が強くなるであろうと信ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
写真の上に顔をし出し、「これはTさん、これはHさん、これがSさん、それからこれがあなた。ねえそうでしょう?」
二つは低い石甃いしだたみだんの上に並んで立っていて春琴女の墓の右脇みぎわきにひともとまつが植えてあり緑の枝が墓石の上へ屋根のようにびているのであるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ぐず/\いうこたァねえ。——日暮里を来すぎたら、こゝまで来たんだ、もう呼吸いきして田端へ出りゃァいゝ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ロミオ はて、びるとへば、そのびるとは足下きみはなしたぢゃ、いま天下てんかならびもない拔作ぬけさくどのとは足下きみのことぢゃ。
この頃の冗漫弛緩じようまんちくわんの筆を徒らにばしたやうな、所謂いはゆる勞作らうさくを見れば見る程、その一字一句もいやしくしない氏の創作的態度さうさくてきたいどに頭が下らずには居られません。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ある松は何十年もはりがねでしばられたまま、びればしんを折られ、幹ばかり太るようなしつけで生き続けていた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
桑畑くはばたはしはうとうつた菜種なたねすこ黄色きいろふくれたつぼみ聳然すつくりそのゆきからあがつてる。其處そこらにはれたよもぎもぽつり/\としろしとね上體じやうたいもたげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さらに賭博に沈黙を守りながら、賭博者の誰かが何かの拍子に手で曲げてしまった骨牌の角をばしたりしていた。
するすると爪立つまだちし上つたが早いか、さつと横倒しに倒れかかつて、つつつと小走りに右へ、麥畠の畔になぐれ込んでしまつた——旋風つむじかぜが卷いたのだ。
旋風 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それから堀尾ほりお一等卒へ、じろりとその眼を転ずると、やはり右手をさしべながら、もう一度同じ事を繰返くりかえした。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たゞ樹木じゆもくといつてもまつすぎのようなおほきくなるもあり、つゝじやぼけのように、たかびないで、えだひくくわかれ、ちひさい機状きじようになるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
永く獄裏に呻吟しんぎんし、蓋世がいせいの大望を抱きながら、これをぶることあたわず、むなしく涙をのんで昊天こうてんに訴うるものも、古来決して少なくはありますまい。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そこでたいせつなのは、おたがいに人間をばしあうようにたえず心を使うということでなければならない。これが諸君に対する私の第二のお願いである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
宮下君の方から行ったり、郁子いくこさんの方から来たり、新宿で待ち合せて映画館へ入ったりするらしい。遠く郊外へすこともある。それを僕に詳しく報告する。
ロマンスと縁談 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
妹の垣根に煙草が高くびて、美しい花をつけているなどは材料が新しいのみならず、眺としても面白い。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
路用が出来たらすぐにしてしまえばいいものを、娑婆しゃばへ出ると遊びたくなる。やっぱり運の尽きですね
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ぐいぐい上からしかかってくるのを感じながら、そう言い放つと、さっと窓かまちに片手をかけた。
研究者けんきゆうしや次第しだい増加ぞうか優秀ゆうしゆうわか學者がくしや出來できたので、最近さいきん二三年にさんねんあひだおいては此方面このほうめんにも次第しだいびてて、今日こんにちでは最早もはやかれおくれてゐようとはおもはれない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
瑠璃るり色なる不二の翅脈しみやくなだらかに、じよの如き積雪をはだへの衣にけて、悠々いう/\と天空にぶるを仰ぐに、絶高にして一朶いちだ芙蓉ふよう、人間の光学的分析を許さゞる天色を
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
国道こくどうは日にらされて、きいろい綺麗きれいなリボンのように牧場まきばはたけ沿って先へとび、町や村を通りぬけ、人の話では、ふねの見える海までつづいているということです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
それでも、背中せなかや胸をいてやるまい、噫木魂精こだまよ、おまへは腕をして勝ち誇る夢を捧げてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
そのあいだじゅう、ポリプたちは、腕と指とをお姫さまのほうへ、うねうねとばしていました。
露営ろえいの塲所亦少しく平坦へいたんにして充分あしばして睡眠すいみんするを得、且つ水にちか炊煎かんせんに便なり、六回の露営ろえいじつに此夜を以て上乗ぜう/\となす、前水上村長大塚直吉君口吟こうぎんして曰く
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
『えい! るかそるかだ、他にないからダイヤと行こう!』などと掛声がかけられる、そうかと思うと、簡単に『そら、ハートだ! ハートの虫っ喰いだ! スペ公だ!』