鹹水かんすい)” の例文
いや、この二つの快不快は全然相容あいいれぬものではない。むし鹹水かんすいと淡水とのように、一つにっているものである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鹹水かんすい貝塚は元來ぐわんらい海邊かいへんに在るべきものなれど年月のつに從ひ土地隆起とちりうきの爲、海水退きて其位置比較的ひかくてき内地に移る事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
それは八月下旬から九月上旬へかけて、鹹水かんすいに別れ淡水に志して、かつてわが生まれた故郷へ旅するのである。
魔味洗心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
田辺浜の内の浦などいう処は近年まで鮫毎度谷鰹てふ魚を谷海とて鹹水かんすいで満ちた細長き谷間へ追い込み漁利を与えた故今も鮫を神様、夷子えびす様など唱え鮫というを忌む
「そういうわけではありません……つまり、淡水たんすい鹹水かんすいとの区別かも知れません。淡水は、線を以て描くによろしく、鹹水は、色を以て現わすのが適当という程度のものか知ら……」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おおきななみをあげたり、じっとしずまったり、だれも誰も見ていないところでいろいろに変ったその巨きな鹹水かんすい継承者けいしょうしゃは、今日は波にちらちら火を点じ、ぴたぴたむかしなぎさをうちながら夜昼南へながれるのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
蓋し淡水と鹹水かんすいとを相分つの意なり。
長塚節歌集:2 中 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)