とび)” の例文
秀忠から文句を云われたとき「自分がとびの尾の槍を以て陣したときは、一度も崩れたことがないが、石垣は無心のもの故是非に及ばない」
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
下総国しもうさのくに香取郡万歳の後山うしろやまへ、村の者ども五人連れ立って木こりに行きけるに、少しかたえなる山の端に、常のよりは汚気きたなげに見ゆるとび一つ羽を休めいたり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「秋の雲、靉靆あいたいと、あのとびたちまち孔雀くじゃくとなって、その翼に召したりとも思うお姿、さながら夢枕にお立ちあるように思出しましたは、貴女あなた令嬢様おあねえさま、貴女の事じゃ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天業てんげふ恢弘くわいこう黎明しののめ、鎭みに鎭む底つ岩根いはねの上に宮柱みやばしらふとしき立てた橿原かしはら高御座たかみくらを、人皇第一代神倭磐余彦かむやまといはれひこ天皇すめらみことを、ああ、大和やまとは國のまほろば、とりよろふ青垣あをがきとびは舞ひ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
汝等つまびらかに諸の悪業を作ると。汝等といふは、元来はわれわれふくろふとびなどに対して申さるゝのぢゃが、ご本意は梟にあるのぢゃ、あとのご文の罪相を拝するに、みなわれわれのことぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
汝等つまびらかに諸の悪業を作ると。汝等というは、元来はわれわれふくろうとびなどに対して申さるるのじゃが、ご本意は梟にあるのじゃ、あとのご文の罪相を拝するに、みなわれわれのことじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やあ、緑青色の夥間なかまじよ、染殿そめどの御后おんきさい垣間かいま見た、天狗てんぐが通力を失って、羽の折れたとびとなって都大路にふたふたと羽搏はうったごとく……あわただしいげ方して、通用門から、どたりと廻る。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)