鬼哭きこく)” の例文
ここらの木暗こぐらい所には、なお拾われない白骨が土や落葉の下にどれほどあることかわからない。正成の心耳には切々とその浮かばれぬものの鬼哭きこくがわかる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
経文を唱える俊恵の声は啾々しゅうしゅうたる鬼哭きこくを思わせる、しばらくすると七兵衛が呟くようなこえでそれに和し、村人たちもそっとそれにつけだした、他聞をはばかりながら
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのたびに一人ふたり、よろめきさがるもの、地に伏さって鬼哭きこくむ者。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夜々綢繆ちうびうの思ひ絶えざる彷彿はうふつ一味の調は、やがて絶海の孤島に謫死てきししたる大英雄を歌ふの壮調となり五丈原頭ごぢやうげんとう凄惨せいさんの秋をかなでゝは人をして啾々しうしう鬼哭きこくに泣かしめ、時に鏗爾かうじたる暮天の鐘に和して
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大笑たいしょうの奥には熱涙がひそんでいる。雑談じょうだんの底には啾々しゅうしゅうたる鬼哭きこくが聞える。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
思いを過去のそういう跡にめぐらせば、山水の美は、却って鬼哭きこくを心に聴かしめる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼哭きこくを噛むような、左膳の声が。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
潮にみなぎる鬼哭きこく啾々しうしう
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
惨々さんさん幽々ゆうゆう、なにか霊壇れいだんを吹きめぐる形なきものが鬼哭きこくしてでもいるようだ……
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼哭きこく
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)