飄乎ひょうこ)” の例文
飄乎ひょうことして、彼方へ、びっこをひいてゆくのが見える。——にもかかわらず、いかに悍馬に鞭打っても、少しもその後ろ姿に近づくことができなかった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三斎は、ますます鋭い凝視を、飄乎ひょうこたる面上に、注がざるを得ない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
まことに飄乎ひょうこたる物腰である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして酒をのませかゆなど食べさせてみると、この老人のはなしぶりや態度には、どこか飄乎ひょうこたる風があって、わざとらしくなく、また慾得よくとくもなければ愚痴ぐちもなく
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船影が見えなくなるまで、龐統は岸にたたずんでいたが、やがて飄乎ひょうことして、何処へか立ち去った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一見飄乎ひょうことした旅の坊さんでしかないが、眉骨たかく、口は大きく、どこか異相なところがある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところが、その友松どのは、今朝起きてみますと、もうおりませぬ。兵と共に起き出て、まだ夜も明けぬうち、一笠一杖いちりゅういちじょうの気軽さ、飄乎ひょうことして立ち去ったものとみえまする」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから半刻はんときほど後には、鳥居強右衛門は、もう飄乎ひょうことして、町の暗闇をあるいていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある日、弥作の貧しい家に、飄乎ひょうことして、白髯はくぜんの一高士こうしが杖をとめた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この伝統の強い三河きの仲間を去って、ふたたび飄乎ひょうことして、浪々の身過みす世過よすぎを送っていたかもしれない——と常に思うにつけて、その恩を、その知己を、感謝している彼なのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)