おとがい)” の例文
閑話休題、梅坊主一座の漫舞には他に桃太郎、住吉踊、雀踊りの顎合はせ、大津絵などがあり、舞踊と舞踊との間には、常に即妙の滑稽を混へてよく見物のおとがいを解いた。
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
それが亭主の厨子野耕介ずしのこうすけという男らしいのである。肉の薄い、そして粘土ねんどのような青い顔には研師のようなするどさも見えない。月代さかやきからおとがいまでは、怖ろしく長い顔に見えた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何やらはしゃいだ調子で、ちゃらちゃらと茶碗の中で箸をゆすぎ、さもいそがしそうに皿小鉢を手早く茶棚にしまいながらも、おとがいを動して込上げる沢庵漬のおくびを押えつけている。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
七月二十九日(一八三〇年)は空中に漂い、驚くべき光が現われ、うち開いてる武力のおとがいはたじろぎ、獅子ししのごとき軍隊は、予言者フランスがつっ立って泰然と構えているのを
お増は興奮した目色をして、おとがいなどのしっかりした、目元の優しい男の顔を見つめた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
御簾みすを動かすばかり起りましたが、その声のまだ終らない中に、印を結び直した横川よかわ僧都そうずが、おもむろししの余ったおとがいを動かして、秘密の呪文じゅもんしますと、たちまちその雲気の中に
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)