たた)” の例文
天文学者はこの機を利用して観測に耽り、詩人宗教家はこの間に星月夜の美観を唱い造化の偉大をたたえる事が出来る。
宇宙の二大星流 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
祭りといえば、どこの地方より、賑うし、酔って、土民が唄うのを聞けば、唄にまで、将門の徳を、たたえている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒に光栄あれ! バッカスよわれ今汝をたたえん! ごめん、婦人諸君、これはスペイン式だ。ところで、その証拠はここにある、曰く、この人民にしてこのたるあり。
夫人の美しさをたたえると同時に、夫人の態度を非難するあらしのような世評の中に在って、夫人の本当の心、その本当の姿を知っているものは、美奈子と直也の外にはなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
星はキラキラと、輝やきはじめ、月は、善男善女が楽しく讚仰歌カリャードカを流しまはつて基督をたたへることの出来るやうに、あまねく下界を照らすため、勿体らしく中空へと昇つた。
キテ今リ庶政ヲル/小儒ひそカニ擬ス昇平ヲたたヘント〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何ものをもたたうるを欲せざりき。
大宮の春をたたへき。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「この地は、かつて関将軍が治め給うた領地でした。将軍の生けるうちすら、わたくしどもはご恩徳をたたえて、家ごとに朝夕ちょうせきはいしておりました。いわんや今、神明と帰し給うをや」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ジャン・ヴァルジャン! 汝の周囲には多くの声あって、大なる響きを立て、大声に語り、汝をたたえるであろう。それからまただれにも聞こえぬ一つの声あって、暗黒のうちに汝をのろうであろう。
爺は、わがおあるじをたたえることに得々となって、そう、しゃべりつづけていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
邪吏じゃりらし、年税の過少をただすなど、あらゆる政治にも心をそそいだので、都市地方を問わず、今やこの国こそ、楽土安民の相を、地上に顕観けんかんしたものと、上下徳をたたえない者はなかった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)