しりがい)” の例文
それがある時一人のいたずら者があって、馬のしりがいをこの淵へほうり込んで以来、ばったりその音をきくことが出来なくなったといいます。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
其翌日男真面目まじめ媒妁なこうどを頼めば吉兵衛笑って牛のしりがい老人としよりの云う事どうじゃ/\と云さして、元よりその支度したく大方は出来たり、善は急いで今宵こよいにすべし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
首のあぶみずりのところも、肉などはまるっきりなくなって、しりがいがだらしなく後肢のほうへずりさがり、馬勒はみの重さにも耐えないというように、いつも、がっくりと首をたれている。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しりがいの木の滑子ローラーやその他をぶら下げているので、白い、砂地の路を、緩急いろいろに馬をやりながら進む我々は、多分の騒音と埃とを立てた。海岸はどこ迄行っても終らぬように思われた。
「それから君の乗馬のしりがいは、どうも長すぎるようだぞ……」
接吻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一構しりがいつくる窗のはな 凡兆
本の装釘 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
しりがいには瓔珞やうらくつけさせられ——
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一構ひとかまえしりがいつくる窓のはな 兆
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
お辰が御前に惚たも善く惚たと当世の惚様ほれようの上手なに感心して居るから、ばばとも相談して支度出来次第婚礼さするつもりじゃ、コレ珠運年寄の云う事と牛のしりがい外れそうで外れぬ者じゃ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
牛のしりがいここに外れてモウともギュウとも云うべき言葉なく、何と珠運に云い訳せん、さりとて猥褻みだらなるおこないはお辰に限りてなかりし者をと蜘手くもでに思い屈する時、先程の男きたりてまた渡す包物つつみものひらきて見れば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)