面立おもだち)” の例文
編笠にかくれた面立おもだちは解りませぬが、年のころは三十あまりと思われるのが、ただ一人、供もつれず、物思いがちにブラリブラリと逍遙さまよっておりました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
やがてまたうたたねが途中に入って来た——鋭く顔を刺して面立おもだちをこわばらせる、塩からい糠雨ぬかあめに妨げられながら。……彼がすっかり目をさました時には、もう夜が明けていた。
いつのにか自分の隣りに、背廣に鳥打帽を冠つた年は二十四五、子供らしい面立おもだちの殘つてゐる一人の男が腰をかけてゐた。然し季子は自分に話しかけたのではないと思つて、默つてゐると
或夜 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
つかさんのピニヨレは何時いつも白いしやで髪から首筋を包んで居てラフワエルのいた聖母像を想はしめる優しい面立おもだちの女だが、娘はおかあさん程美しくは無いけれど気立きだては更に一層素直であるらしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
糸織の筒袖に博多の献上の帯を締め、黄八丈の羽織を着てきゃらこの白足袋に雪駄せったを穿いた様子が、色の白い瓜実顔うりざねがお面立おもだちとよく似合って、今更品位に打たれたように、私はうっとりとして了った。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この老翁は豊かな面立おもだちで、顔の皺までひとつ一つ丁寧に描いてある。
茂吉の一面 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
面立おもだちの愛らしい、元気もなかなかよい子でありました。
いつの間にか自分の隣りに、背広に鳥打帽を冠った年は二十四、五、子供らしい面立おもだちの残っている一人の男が腰をかけていた。しかし季子は自分に話しかけたのではないと思って、黙っていると
或夜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)