青人草あおひとぐさ)” の例文
然しながら土は依然として土である。歴史は青人草あおひとぐさの上を唯風の如く吹き過ぎた。農のいのちは土の命である。諸君は土を亡ぼすことは出来ない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『直毘の霊』の中にはまた、中世以来の政治、あめしたの御制度が漢意からごころの移ったもので、この国の青人草あおひとぐさの心までもそのこころに移ったと嘆き悲しんである。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
劫初ごうしょから末代まで、此世に出ては消える、あめした青人草あおひとぐさと一列に、おれは、此世に、影も形も残さない草の葉になるのは、いやだ。どうあっても、不承知だ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
青人草あおひとぐさにあわれをかけ、国の毒と、世のよこしまをのぞき、なべて義と情けと、信と誠とを、にごり世にも失わないでください。それを行うところに、おひるみはいりませぬ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏法破壊の魔王とばばよべ、妖婦の虚飾にひとしい一山の輪奐りんかんの美も、お道化者どけものにひとしい甲冑の坊主どもも、一戦の火に葬り去って、その焼けあとに、まこと青人草あおひとぐさを生ぜしめ
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)