雪催ゆきもよ)” の例文
雪催ゆきもよいのくもったそらに、教会堂きょうかいどうのとがった三角形かくけい屋根やねは、くろえがされていました。そして、かたわらのちいさなうちから、ちらちらとあかりがもれていました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
打ちひしがれた平八は、両国橋の方へ辿って行った。雪催ゆきもよいの寒い風が、ピューッと河から吹き上がった。「おお寒い」と呟いたとたん、彼の理性が回復された。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その中に、馬車のわだちの跡だけが、泥ににじんでいる。私はいま、東北の或る田舎を旅をしているのだが、この地方では、三月の半ば過ぎていると言うのに、まだ空は雪催ゆきもよいだ。
月見草 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
田部さんがリュックを背負って帰って行かれた七日の夕方も、そんな雪催ゆきもよいだった。
雉子日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それは雪催ゆきもよいの寒い日で、わたしは受付の火鉢へ無遠慮に手をかざして、奥へ呼び込まれるのを待っていると、やがて二階の編集局へ呼び上げられて、関氏自身が大勢に紹介してくれた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
町「はい、少し雪催ゆきもよおしで曇りました」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雪催ゆきもよひせる庭ながら下り立ちぬ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)