月見草つきみそう
馬車が深い渓流に沿った懸崖の上を走っていた。はるかの底の方に水の音がする。崖の地肌には雪に、灰色の曇った空がうつって、どことなく薄黒い。疎林がその崖に死んだように立っている。 その中に、馬車の轍の跡だけが、泥に染んでいる。私はいま、東北の或 …
題名が同じ作品
月見草 (新字新仮名)山之口貘 (著)