難面つれな)” の例文
は何時の間にか太くたくましく成ッて、「何したのじゃアないか」ト疑ッた頃には、既に「そいたいのじゃ」というへびに成ッて這廻はいまわッていた……むし難面つれなくされたならば
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
我に難面つれなきも御邊に義理を立つる爲と、心にねたましく思ひ、彼の老女を傳手つてに御邊が事、色々惡樣に言ひなせし事、いかに戀路に迷ひし人の常とは言へ、今更我れながら心の程の怪しまるゝばかり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
貫一は唯不思議の為体ていたらくあきれ惑ひてことばでず、やうやく泣ゐる彼を推斥おしのけんと為たれど、にかはの附きたるやうに取縋りつつ、益す泣いて泣いて止まず。涙の湿うるほひ単衣ひとへとほして、この難面つれなき人のはだへみぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)