隠居所いんきょじょ)” の例文
旧字:隱居所
今はその慧林寺の境内にある望月庵ぼうげつあんという、前管長——この時にはもう管長を辞していた——の隠居所いんきょじょにいるのだった。
つのらせていたところ父親九兵衛が老後の用意に天下茶屋てんがぢゃや閑静かんせいな場所を選び葛家葺くずやぶき隠居所いんきょじょを建て十数株のうめの古木を庭園に取り込んであったがある年の如月きさらぎにここで梅見のうたげもよお
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
六郎が祖父は隠居所いんきょじょにありしが、馳出はせいでて門のあきたるを見て、外なる狼藉者ろうぜきものを入れじと、門をとざさんとせしが、白刃振りてせまられ、いきおいてきしがたしとやおもいけん、また隠居所に入りぬ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さる老実業家が自分の隠居所いんきょじょを建てるつもりで、いろいろの庭木にわきなども用意し、ことに、千本にも近いつつじを植えんでおいたところなので、花の季節になると、にしきをしいたような美観を呈する。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その住職じゅうしょく隠居所いんきょじょの跡だったそうにございますよ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
所々ところどころに見える灯は、どこかのりょう隠居所いんきょじょだの」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)