陽焦ひや)” の例文
すっかり陽焦ひやけがして、乞食臭くなっているので、それを世間並の人間らしく戻すには、どうしても一年はかかったのでございます。
一学は舌打ちをして肩越かたごしに眼を向けた。三十四五の旅商人たびあきんどにしては陽焦ひやけの浅い男である。ひとみがぶつかると、急に世辞笑いをして
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すつかり陽焦ひやけがして、乞食臭くなつて居るので、それを世間並の人間らしく戻すには、どうしても一年はかゝつたのでございます。
笠をかぶる必要もないほど陽焦ひやけのしている真ッ黒顔に、これもまた、往来へ捨てても拾いがありそうもない古笠をかぶっているのだ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大阪の天満てんまに、原惣右衛門をたずね、不破数右衛門に会い、中村勘助をたずね、潮田又之丞をさがし、東奔西走、陽焦ひやけと汗にまみれていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僻地へきち山間の悪戦を続けたこの四十日ばかりの間に、秀吉以下、部将たちの顔も、真っ黒に陽焦ひやけしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何のはばかりも屈託くったくも彼にはない。藤吉郎は、彼女のやや小麦色に陽焦ひやけした顔をのぞきこんで
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陽焦ひやけのした骨太の顔に薄あばたがあり、耳の下から顎にかけて四半分ほど顔がない。ないというのはおかしいが、太刀で斬られたきずあとの肉が変に縮んでしまったのかも知れない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、うっかり呼びかけないほど、彼の顔は陽焦ひやけしていた。ひげはあまりえないたちであるが、肌はまきのように荒れ、兜摺かぶとずれに額は禿げて、鼻のあたまや頬は赤くしもげ、歯と眼ばかりが白かった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)