おも)” の例文
その癖、出会えば女乞食は今は全く態度をあらためて、わたくしにおもねるような媚びるような、またおだて上げるような所作をして
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
わたくしは昭和現在の時勢におもねる心で此れを言ふのではない。日本の自然のあらゆる物は子供の時からさういふ心持をさせてゐたのである。
冬日の窓 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
遊侠の徒と交際まじわられ、権威に屈せず武威に恐れず、富におもねらず貧に恥じず、天空海濶に振舞われる当代での英傑であろう。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又その素振そぶりや物腰ものごしには何かしら相手の好意と知遇におもねるようなところがある。彼が笑うととてもチャーミングで、髪は薄色で、眼は蒼かった。
現在の法隆寺は自己の伝統にうぬぼれて、何事にも勿体もったいをつけようとするあさましい寺になっている。その半面には見物人におもねる卑屈な根性もみられる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
わたくしは昭和現在の時勢におもねる心でこれを言うのではない。日本の自然のあらゆる物は子供の時からそういう心持をさせていたのである。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)