長途ちょうと)” の例文
そして、しんがりを注意深ちゅういぶかビーがんがつとめ、よわいものをばれつなかにいれて、長途ちょうとたびについたのであります。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
高坂は語りつつも、長途ちょうとくるしみ、雨露あめつゆさらされた当時を思い起すに付け、今も、気弱り、しん疲れて、ここに深山みやまちり一つ、心にかからぬ折ながら、なおかつ垂々たらたらそびらに汗。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「とにかく金よ、お前も長途ちょうとの旅行で疲れたろう。この寝室を貸してあげるから、ゆっくりひと寝入りしなさい。その間に、われわれは万端ばんたんの用意をととのえることにするから」
二日目と三日目が長途ちょうとの早打には最も苦しい時だという。頭脳あたまは何も考えられなくなって、揺れ方がわるいと、嘔吐気はきけがつきあげてくる。三平は時々、気付薬きつけを口に頬ばっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなさんは長途ちょうとのお疲れもあることとて、すべての心配と危惧きぐをすててとうぶんはゆっくりとお好きなものをたべ、お気にいったところを散歩して、健康を回復していただきましょう。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
もとは、勅使の接待役、上野介などへ世辞はいらんことじゃ。所で、この衝立ついたては、何と心得て出された。晴の御大礼、長途ちょうとの勅使を寿ことほぎまつる大玄関に、墨絵のものを置くとは何という量見じゃの。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)