長物ながもの)” の例文
倒れる処を其の者の抜きました長物ながもの刀背打むねうちに二ツ三ツちましたが、七人力ある人にぶたれたのですからたまりません
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二言三言云ひつのつたと思ふと、森がいきなり眼の色を変へて、蝦鞘巻えびさやまきつかに手をかけた。勿論、井上も負けてはゐない。すぐに、朱鞘しゆざや長物ながものをひきよせて、立上る。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
無反むぞり長物ながものを落差しにし、右を懐手にして、左手で竿をのべている。月代さかやきは蒼みわたり、身なりがきっぱりとしているから浪人者ではあるまい、相当の家中かちゅうと見わけられるのである。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
中にもくだん長物ながものなどは、かかる夜更よふけに、ともすると、人のねむりを驚かして
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寺院には似げもない長物ながものを、思いもかけぬ人の手で見せられて、さやを払って見るといっそう驚目きょうもくに価するのは、その刀が最近において、まさしく人を斬った覚えのある刀に相違ないと見たからです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と云いながらずか/\/\と詰め寄って長物ながものへ手を掛けましたが、此のあとは何う相成りましょう。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
障子越しに長物ながもので突殺せば、大野惣兵衞から五十両褒美をくれるというので、慾張った奴で、剣術は少し心得ておりますが、至って臆病者でございます、怖々こわ/″\様子をうかゞいますと
長物ながものを抜いて新五郎が度胸をすえ、小窓から物干へ這出して来ます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多助はおえいをつれて参り、見物させて帰ってくると、其の跡から続いて内へ入って来た男は、胴金造りの長物ながものをさし、すげの三度笠を手に下げ、月代さかやきを生し、刷毛先はけさきちらばし、素足に草鞋を穿いて
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)