銃音つつおと)” の例文
と見えた刹那——、轟然ごうぜんとして銃音つつおとが耳をつんざいた。一緒に羽ばたきのような足音が殺到したかと思われるや、突然叫んで言った。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
見ているうちに小舟が一そういそを離れたと思うと、舟から一発打ち出す銃音つつおとに、游いでいた者が見えなくなった。しばらくして小舟が磯にかえった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ふうむ、じゃあ、あの銃音つつおとは、おどかしのためだったのか? おどかしだとすれば、ああしてじっとしているからには、いのち取りの弾丸にやられるはずはねえ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
洞然たる秋晴の朝、対岸しも手の八右衛門谷ハッチョモダンの方角に当って、軽い銃音つつおとが二、三度ひびくのを聞いた。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
意地にも坐っていられなくなり、わしは老母おふくろを背中へ背負って、火の粉や銃音つつおとの中を、駈け出した。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
轟然たる銃音つつおと、金庫室をこもる煙の中に、相撃つ肉弾、暫らくは敵味方必死と揉み合いましたがやがて五十余名の警官隊、十数名の兇賊を数珠じゅずつなぎに、白日の如き光の中に押し並べます。
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
銃音つつおと響く、弾丸たまは光れり、——
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
銃音つつおと雄叫おたけびに、明けては暮れ、暮れては明け、ここ三年のあいだというもの、まったく家なく身なく骨肉なく——ただこの一城を中心に、飢えてもきずついても、屈せず退かず
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独り淋しそうに道をいそぐ女の足音。遠く響く砲声。隣の林でだしぬけに起こる銃音つつおと
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ダ、ダ、ダダダンと、銃音つつおとこだまして聞えた。茂助は、その途端から夢中だった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ド、ド、ド、ドン、と続けさまに五、六発の銃音つつおとがした。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人おく。……怖ろしかったか。夕方の銃音つつおとは」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)