金枝玉葉きんしぎょくよう)” の例文
一人ひとり動いたあとは不思議なもので、御年も若く繊弱かよわい宮様のような女性でありながらも、ことに宮中の奥深く育てられた金枝玉葉きんしぎょくようの御身で
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
代々この地方に住んではいるが、祖先は金枝玉葉きんしぎょくようの出であり、そう太祖たいそ丹書鉄券おすみつきも家に伝えられている。——「ご存知ないか?」その迂愚うぐあざけったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏侯楙は軍議の席で、まるで他人事ひとごとみたいに趙雲の武勇をめた。魏帝の金枝玉葉きんしぎょくようだけあって、大まかというのか、なんというのか、諸将は彼の顔をながめ合っていた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暁の御夢おんゆめをおどろかし奉ったことすら恐懼きょうくにたえないのに、このままわれらが合戦に及ぶにおいては、金枝玉葉きんしぎょくようの御身にいかなるお怪我けがや思わざる不敬あるやもはかがたい。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とらえて捕虜としたことでしかなかった。一系の根も血も一つの、金枝玉葉きんしぎょくようではあったのに。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてただ滄州そうしゅうの片ほとりに、そのかみの庭園ややかたの美に、かすかなる金枝玉葉きんしぎょくようの家の名残りをたもち、地方人の畏敬と、あるじの徳望とによって、なお門戸に、いくたの客を養い
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汝は今、われわれの長兄たり主君たるお方に対して、賢弟などとなれなれしくんだが、こちらはいやしくも漢の天子の流れをくむ金枝玉葉きんしぎょくようだ、汝は一匹夫ひっぷ、人家の奴に過ぎない男ではないか。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)