重手おもで)” の例文
竹内の組から抜いて高見につけられた小頭千場作兵衛は重手おもでを負って台所に出て、水瓶みずかめの水をんだが、そのままそこにへたばっていた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一、父は不忍しのばずの某酒亭にて黒田藩の武士と時勢の事につき口論の上、多勢に一人にて重手おもで負い、無念ながら切腹し相果あいはつる者也。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
母子おやこは生れて以来の母子で、このたっとい観念を傷つけられたおぼえは、重手おもでにしろ浅手あさでにしろ、まだ経験した試しがないという考えから、もしあの事を云い出して
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中でも、いちばん重手おもでを負ったのは、猪熊いのくまおじである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
重手おもでで自宅へいて行かれた人たちのほかは、皆芝生に平伏した。働いたものは血によごれている、小屋を焼く手伝いばかりしたものは、灰ばかりあびている。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
役人の復命にって、酒井家から沙汰があった。三右衛門が重手おもでを負いながら、癖者を中の口まで追って出たのは、「平生へいぜい心得方宜こころえかたよろしきつき、格式相当の葬儀可取行とりおこなふべし
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)