まず)” の例文
それを待っていたように、そっと中から開けたのは、寝巻姿のお染、まだ寝乱れてはいませんが、まずいながらも妙に娘らしくなまめきます。
いかさま、日に焼けたその顔は——鼻付のまずさから、目の細さ加減、口唇の恰好、土にまみれた藁草履を思出させる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
振返ってみると、髪結のお鶴、まずい顔ですが、それでも人のいい笑いを浮べて、慰め顔に、平次の顔を差しのぞきます。
日に焼けたまずい顔の女では有りましたが、調子の女らしい、節の凄婉あわれな、凄婉なというよりは悲傷いたましい、それをすずしいかなしい声で歌いましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
振返ってみると、髪結のお鶴、まずい顔ですが、それでも人のいい笑いを浮べて、慰め顔に、平次の顔を差しのぞきます。
世間を見るに、い声がまず口唇くちびるから出るのはめずらしくも有ません。然し、この女のようなのもすくないと思いました。一節歌われると、もう私は泣きたいような心地こころもちになって、胸が込上げて来ました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
万一眼識めがねにかなえば、お品——出戻りのまずい面じゃ、大して有難くもあるまいが、とにかく、お品と娶合めあわせるなり、それがいやなら外から嫁を取って、俺の跡を継がしてもいい