醇化じゅんか)” の例文
グプタ朝芸術は恐らくガンダーラ美術の醇化じゅんかであろう。あるいはまた、ギリシア精神のインドにおける復興とも見られるであろう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
しかしながら本当に考えてみると、その人の生活に十分の醇化じゅんかを経ていないで、過去から注ぎ入れられた生命力に漫然と依頼しているのが発見されるだろう。
想片 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
二葉亭のは根本から欧文に醇化じゅんかされ、極めて楽に日常用語を消化して全く文章離れがしていたが、美妙のはマダ在来の文章型を脱し切れない未成品であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
教学の根本を彼は師弟の結びにありとなし、師たるものを重んじ、その徳を涵養かんようさせた。また内治の根本はにありとなし、吏風を醇化じゅんかし吏心を高めさせた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何故なぜならそこに見られるものは単なる醇化じゅんか作用ではなく、いわば強い昇華作用が働いているからだ。これが影響の最も望ましい形であることは言うまでもない。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
知的なそんな念仏は、決して念仏に醇化じゅんかしたものとは申されません。ただ「南無阿弥陀仏」でよく、意味などにとらわれるなら、まだ本当の称名しょうみょうではありますまい。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
真と人と合して醇化じゅんか一致せる時、その説くところ、言うところは、講義のための講義にあらずして、道のための講義となる。哲学の講義はここに至ってはじめて聞くべし。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かけあい歌が、乞食者ほかいびとの新叙事詩の影響をとり入れて行く中に、しろうとの口にも、類型風の発想がくり返される事になった。そうして其が民謡を生み、抒情詩と醇化じゅんかして行った。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
即ち人間性の内容として重要な位地を占めているものです。それがどうして人間の力で失われよう。教育の進歩に由って、唯だ益々それが動物的の親性から人間的の親性へ醇化じゅんかされて行くばかりです。
「女らしさ」とは何か (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
よき器は周囲を醇化じゅんかする。人々は気づかずとも、いかに工藝の花に、生活の園生が彩られているであろう。そうしていかにすさみがちな人々の心が、それらによって柔らげられているであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私はかつて、この衝動の醇化じゅんかされた表現が芸術だといった。
想片 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
よき器は周囲を醇化じゅんかする。人々は気付かずとも、如何に工藝の花に、生活の園生そのうが彩られているであろう。そうして如何にすさみがちな人々の心が、それらによって柔らげられているであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)