酔余すいよ)” の例文
酔余すいよ素敵な女に会った。忘れかね山を降りて会いに行ったら印象とまるで違った女の様子に這々ほうほうの態で逃げ出したことがあった。
流浪の追憶 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
酔余すいよの興にその家の色黒くせこけた無学の下婢かひをこの魚容に押しつけ、結婚せよ、よい縁だ、と傍若無人に勝手にきめて、魚容は大いに迷惑ではあったが
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
古今独歩と大きく書いて、下に国北生と署名したのは、独歩が酔余すいよの達筆である。自分の似顔に鬼のようなつのを生やして、毒哺生と名を署したのも彼である。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
即ち醜体しゅうたい百戯、芸妓と共に歌舞伎をも見物し小歌浄瑠璃をも聴き、酔余すいよ或は花を弄ぶなどウカれに淫れながら、内の婦人は必ず女大学の範囲中に蟄伏ちっぷくして独り静に留守を守るならんと
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やっといただきに近づいた。と見る、疎林そりんの中の杣道そまみちに、青い巨大な平石がある。武松は笠をぬいで仰向けに転がった。寝るつもりでもなかったが酔余すいよこころよさ、いつかすっかり寝こんでしまったものである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし酔余すいよ余興よきょうに、三、四度伺候しこうしたことがある。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
三枝先生と言ってチヤホヤもてなしてくれるから庄吉は有頂天になって、それからというもの酔余すいよ女人にょにん夢遊訪問はアパートのマダムの部屋となった。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)