あてが)” の例文
後の世にはもつと禄高の多い土地をあてがつて貰ひたく思つてゐたので、かうしてわざわざ使者を立てて、風外を高松に迎へようとしたのだ。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「きれいな子ですよ。お腫物でき一つできない……。」と言って、お銀は餅々もちもちしたそのもものあたりを撫でながら、ばさばさした襁褓むつきあてがってやった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もう見舞いに来る人も少くなった病室に、子供はあてがわれたウエーファを手に持ったまま、み果てたような顔をして、ベッドに腰をかけていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
タゴオルの一家では、亡くなつた岡倉覚三氏に島を一つ買つてあてがはうとした事があつた。相手は岡倉氏の事だ。
「これのまとめが一つで十三銭ずつです」小野田がそう云ってあてがっていった仕事を、お島は普通の女の四倍も五倍もの十四五枚を一日で仕上げた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「それは武器ではない、好奇心キユリオシチイです。私の頭にあてがふよりも博物館に持つて往つた方がよろしい。」といふ。
「その時私がちゃんと小遣いまであてがって、それから何分お願い申しますと、叔母っ子に頼んだくらいじゃないか。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二人は連れ立つてそこらの珈琲コーヒー店に入つて往つた。音楽家は暖い珈琲と菓子の一皿とを乞食にあてがひながら、自分は卓子テーブルりかゝつて、せつせと作曲に取りかゝつた。
おかなの話によると、鉱敷課こうしきかとやらの方に勤めて、鉱夫達と一緒に穴へ入るのが職務であるその旦那から、月々あてがわれる生活費と小遣とは、幾許いくらでもなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
買つてあてがつたところで、格別礼も言はないで、一寸うなづいてみせた位で、直ぐ受取つたに相違ない。