遊蕩あそび)” の例文
三人は青い影を縫い、白い花を浴びてゆくと、まだ宵ではあるが遊蕩あそびの客と見物人とが入りみだれて、押し合うような混雑であった。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さ、来ぬか、内蔵助が、こよいは遊蕩あそびの手ほどきいたそう、万事は、そのうえで。いや、さかずきの底まで深く夜を更かして……
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ塀和さんは綺麗なものよ。ねえ」と細君は妙な笑ひやうをして三藏の顏をちらと見て「まだ遊蕩あそびに行つた事なんか一度も無いでせう。きつと」
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「まあ、可い加減にして、はやく一人貰っちゃどうだ。人の事より御自分が。そうすりゃ遊蕩あそびみます。安保箭五郎悪い事は言わないが、どうだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
只今申上げました三千円の費消つかひこみと申しますのは、究竟つまり遊蕩あそびを致しました為に、店の金に手を着けましたところ、始の内はどうなり融通もきましたので、それが病付やみつきに成つて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たいがい彼等は饒舌家おしゃべりで、道楽者で、勇み肌で、堂々たる恰幅をしている。ノズドゥリョフは三十五歳にもなっていながら、まるで十九か二十の青年と変りがなく、至って遊蕩あそびずきであった。
もともと気の小さい、懐育ちのお坊ちゃんなんだから、遊蕩あそびも駄々でかったんだけれど、それだけにまた自棄になっちゃ乱暴さがたまらないんだもの。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
米磨ぎ笊をかぶったいどれは、歌にあわせて道化た踊りを舞っていた。よほど粋も遊蕩あそびつくした者とみえ、たわむれ半分のうちにも、垢抜け手振りが時々見える。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、可い、そんな事は構わないが、僕と懇意にしてくれるんなら、もうちっと君、遊蕩あそびを控えて貰いたいね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『旗本仲間に友だちが出来おって、近頃、遊蕩あそびは覚えるし、交際つきあい張って、困りものじゃて』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といううちに、朝直し……遊蕩あそびが二度ぶりになって、また、前勘定、このつけを出されると、金が足りない、足りないどころですか、まるで始末が出来ないのです。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうして遊蕩あそびの世界だからといって、気がゆるせたものではない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤次は遊蕩あそびの気分をつくるために、道化どうけた手ぶりをして
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「二十七歳で、遊蕩あそびを知らんぞ、彼」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)