逆旅げきりょ)” の例文
の『奥の細道』の冒頭に「人生は逆旅げきりょ」と言っておるが、そういう見地からいえば、いずれの人生か旅中ならざるであるが
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
コノ夜逆旅げきりょニ来ツテ寝ス。余コレニイツテ曰ク二親おわス。汝ノ来ルハ何ゾヤ。曰ク僕大夫たいふヲ送ツテ至ル。今二親ニまみユ。実ニ望外ノ幸ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
国を視ること逆旅げきりょのごとく、かつて深切の意を尽くすことなく、またその気力をあらわすべき機会をも得ずして、ついに全国の気風を養いなしたるなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
逆旅げきりょの寝覚めにはかかる頼母たのもしからぬ報償をしながら、なお生を貪っていることが、はなはだ腑甲斐ないように思われて、自ら殺したいと思ったことさえあった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
天地は万物の逆旅げきりょにして光陰は百代の過客なり。しかしてこの光陰の大潮流とともに世界の表面に発出する人事の現象はおのずから運転変動せざるべからざるものあり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
天王寺大懺悔てんのうじだいざんげ』一冊を残した外には何の足跡をも残さないで、韜晦とうかいしてついに天涯の一覊客として興津おきつ逆旅げきりょ易簀えきさくしたが、容易にひつを求められない一代の高士であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
己が家も逆旅げきりょのごとく寂しく覚えぬ
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
青木可笑あおきかしょうの『江戸外史』に「官舟ヲ備ヘテ窮民ヲ府内ノ逆旅げきりょニ致スモノ五千余人。」としてある。千住小塚原せんじゅこづかっぱらの石地蔵が水の上に首ばかり出していたというのもこの時である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
途名古屋ニ留ルコト数日、君逆旅げきりょノ主人ヲ介シテソノ著ス所ノ『徳川氏史稿』四巻ヲ以テシテ謁ヲヘリ。すなわち命シテコレヲク。円顱方袍えんろほうほう。挙止安詳。坐さだまルヤコレトともニ古今ノ得失ヲ談ズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)