辰砂しんしゃ)” の例文
内障眼というがたい眼病だ、僕も再度薬を盛りましたが治りません、真珠しんじゅ麝香じゃこう辰砂しんしゃ竜脳りゅうのう蜂蜜はちみつに練って付ければ宜しいが、それは金が掛るから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この品の内側には鮮紅な辰砂しんしゃの跡が見られ、外側は黒く焦げ、その間には繩紋がある。図247に示すものは黒い壁を持つ鉢で、底部は無くなっている。
彼女は斎杭いくいに懸った鏡の前で、兎の背骨を焼いた粉末を顔に塗ると、その上から辰砂しんしゃの粉を両頬にながした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
白釉、黒釉、柿釉かきぐすりあめ釉、青釉、緑釉、海鼠なまこ釉、辰砂しんしゃ釉、青磁せいじ釉等これが流し釉であったり三彩であったりする。このほか窓釉、絞描しぼりがき、染附、象嵌等がある。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ほんものゝ植物以上に生々と浮き出てゐる草花が染付けられてゐる鉄辰砂しんしゃの水差や、てのひらの中に握り隠せるほどの大きさの中に、恋も、嘆きも、男女の媚態びたいも大まかに現はれてゐる芥子けし人形や
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
同じ辰砂しんしゃ(銅の赤)とは云うも、あの明清のそれといかに異なっているか。曇りがちに色を内に匿していない場合はない。同じ模様とは云うもいかに簡素であるか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)