蹴仆けたお)” の例文
あわてず、ひるまず、身辺の者を、蹴仆けたおし、踏みつぶし、一刀を抜き払うや、獅子のようにぎ廻って、狭い道場を忽ち天井までくれないにしてしまった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして暫く快い静寂に浸つてのち、さつき階段を駈け降りた踏み抜くやうな跫音や、蹴仆けたおすやうに開けられた戸、下の夜道を走つてゆく羽搏きのやうな跫音等、一まとめに思ひ出してゐた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
と、嘉十郎を蹴仆けたおし、地面をノタウツのを足で抑え、とどめを刺し
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は、ほかの物とはちがいますので、やおれ待ち給え、と立ちふさがって、その乱暴を止めようとしたのです。——とたんに、蹴仆けたおされていました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ヤクザだなあ」と伊集院、足を上げると蹴仆けたおしてしまった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ごめんなさい! ご免なさい! ……」という泣き声まじりに、おさないお獅子が二人、地べたへ蹴仆けたおされていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
襖を蹴仆けたおす音がして、踏み込んで来たのは捕方である。
首頂戴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
武松の足は、とたんに卓を、遠くへ蹴仆けたおしていた。左の手は、金蓮の黒髪をつかんでいて離さない。金蓮は、ひイっ……といって弓形ゆみなりに身をらす。武松の片腕が軽々と抱え上げたからである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どっと馳け寄って来たのは張保ちょうほの部下だった。初めからの計画か。獄卒たちを蹴仆けたおなぐり仆し、彼らの持っていた祝い物をみなり上げ、さらにこんどは、もがいている楊雄一人へかかって来た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引戻して、試し場の中ほどへ、蹴仆けたおした。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門は、それを、蹴仆けたおした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)