質店しちみせ)” の例文
通称は三右衛門さんえもんである。六せいの祖重光ちょうこうが伊勢国白子しろこから江戸に出て、神田佐久間町に質店しちみせを開き、屋号を三河屋みかわやといった。当時の店は弁慶橋であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
みのるはまだ/\、男と一所の貧乏きうぼうな生活の爲に厭な思ひをして質店しちみせの軒さへくゞるけれども、義男は女の好む藝術の爲に新らしい書物一とつ供給あてがふ事を知らなかつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
そのはどう云ふ画だつたか、どの位の金を払つたか、それはどちらも明らかではない。が、買つた時は千八百八十七年、買つた場所はストランド(ロンドン)の或質店しちみせの店さきである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これを種にしてお染久松という質店しちみせの浄瑠璃が出来ましたものでござります。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と親切にいたわってうちへ連れて来て見ると、人柄もよし、年二十一歳で手も書け算盤そろばんも出来るから質店しちみせへ置いて使って見るとじつめいで応対が本当なり、苦労したはてで柔和で人交際ひとづきあいがよいから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
矢川は質店しちみせを開いたが成功しなかった。浅越は名をりゅうあらためて、あるいは東京府の吏となり、あるいは本所区役所の書記となり、あるいは本所銀行の事務員となりなどした。浅越の子は四人あった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)