おわ)” の例文
爺は、この黒い、白い雪の斑点はんてんの付いた昆布のように凍えた合羽を後方うしろに取りけると、女の背には、乳飲児がおわされていた。これを見た老婆は
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どっと倒れる所、孫右衛門得たりと斬つけて耳の上と眼の上へおわせた。ハラハラとして、その様をみていた市蔵、来金道が打込むとき吾を忘れて走出した。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
肩のあたりおわれかかりて、茶褐色の犬一頭、飼主の病苦を憂慮きづかいてそを看護みとらんと勤むるごとし。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羊腸つづらおりありともしらで人のせにおわれて秋の山ふみをしつ
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)